前のエントリで、一週間の禁酒中だと書きましたが、よく考えればオフィスで僕の隣に座っているS上さんはお酒を飲まないので、これがベーシックな状態なんだと気づき、愕然としました。S上さんに限らず、お酒を飲まれない方がいるということを驚きとともに再認識しました。
さてS上さんに関する話でちょっと面白かったことを一つ。
とにかく新しい技術やガジェットが大好きで、まあ僕もそうなんですが、節操のなさでは僕の上を行っています。ま、そういう前提のもと。
先日、某協議会を訪れる機会があり、S上さんに行き方(所要時間、駅、駅からのコース)をお願いしていました。普通僕の場合は、訪問先のWebサイトのアクセス情報で最寄り駅と地図を手に入れ、それを印刷し(昔はそれをPDAや、今ならスマートフォンに入れていたこともありましたが、結局紙の方が早い)、それから乗り換え案内で電車のコースを調べておきます。
そんなつもりでS上さんにお願いしたら「はい、大丈夫です」とのこと。
普段あまり人任せにしないんですが、そのときは他のことがあり、またS上さんの依頼で僕が同行するというパターンだったので、S上さんにお願いしていました。駅へ向かう途中、念のため「地図印刷してきました?」と聞くと、「いえ、これに入れました」と携帯を見せます。つまり「大丈夫です」とは、「先方の住所を携帯のナビに登録した」ということで、ついてからどちらへ行くのかに関して全く予習なしということです。この時点で若干の不安がよぎります。技術を過信してはまることが経験上とっても多いからです。地下鉄に乗り、目的の駅に近づいて来たところで、僕は「出口は何番ですか?」と聞きました。これが今回の話で一番面白いところで、オチにしても良いくらいなんですが、S上さんの返答は、携帯をとりだしてちょっといじくったあと
「(電波が入らないので)地上に出ないとわからないですね」
!!!!!
結局駅の案内を見て、近そうな出口から出ました。いよいよナビの登場です。その駅とは神谷町で、僕は割と詳しいエリアなので地図さえあればすぐに行けるんですが、今回はナビに誘導されるS上さんについて行きます。で、結局、愛宕ヒルズのあたりで、(例の)「目的地周辺です。ぽーん」といきなり突き放されてしまいました。S上さんもきょろきょろ呆然。僕も携帯のナビの地図を見せてもらうとどう見ても道の反対側。最初に渡っておくべきでした。結局ナビではなく、あくまで携帯上の「地図」を見て、たどり着くことができました。
携帯のナビの性能が悪いと言っているのではありません。カーナビもそうですが、使う人はあくまでもそれを(補助)ツールとして使わないといけないということです。問題点をすべて、機械やツールに押しつけて、それで解決するということはまずありません。技術を信じたい気持ちは僕も同じで、同様の失敗をよくしてきたからあえて言うんですが。
持論として、技術やツールは、それを使うことによって現状が改善されなければいけないと思っています(当たり前か)。そうでなければ使わない方が良い、と思っています。もちろんそれが趣味で試したいというなら別ですし、僕もよくやります。
たとえば僕が生業としているインターネットにはWebに始まり、メール、Skypeなど様々なツールが整備されていて、Web 2.0 とか UGC とか CGM という名の下、ちょっと前では信じられないようなスマートなサービスがしかも無料であふれています。でも結局のところ、これらのツールは、実際に我々が呼吸をしていて、触れることができる、現実の世界を豊かにする義務が最終的にあります。でなければおもちゃ、あるいは趣味です。Web の世界に限定すると、もう相当サービスは充実したと見ています。もし、Web 3.0 のような次のシフトがあるなら、それは明らかにサイバーをリアルに結びつけて、もっと現実の世の中を豊かにしていくフェーズのことだと思っています。と、同時に僕は早くそうなってくれるべきだと思っています。だからきっとFONやPlaceEngineが好きなんですな。
Webのサービスは誰でも作れるようになってきました。こういう状況で相対的に強くなっていくのは、現実世界へリーチできる人たちです。ものを作ったり、実際にものを人に手渡せる人たち、インターネットビジネスから遠い世界にいる人たちが、インターネット全盛時代には、皮肉なことに需要が高まるでしょう。
上のナビの話ではないですが、ツールをおもちゃにするのも、「今の状態を少し良くするもの」と認識して活用するのも、ユーザー次第というところもあります。裏を返せば、サービスの提供者側はそれをaffordするような(エントラップするような)UIなり、イントロダクションが求められるのでしょう。
今後ますます便利なツールが提供されていくユーザーがそれらの恩恵にあずかるためには、まず現実の世界や現実の生活ありき、そして「基本は自力」で、それを助けるためにツールを使う、こういう態度を忘れないようにすべきと思います。
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追記 (2008/05/27) S上さんからコメントもらいましたので追記します。
(1) 普段は携帯のナビで失敗することはないとのこと。このときだけ失敗したそうです :)
(2) 地下鉄の出口の件は、電車の中でうまく聞き取れなかったため、そのように答えた(?)とのこと。。
ま、いずれにせよ、本来の目的は、ナビだけでちゃんとたどり着けるか!?」を実験することではなくて、何が起きても確実に目的につくことですから、いざというときのために地図は印刷して持参し、少なくとも前もって地図を見て目的地がどの辺にあるかを見ておくのは必要でしょう。
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