小学館 (2001/08)
売り上げランキング: 3952
本書出版への流れ
日本人元来の「公」美徳精神の再評価
台湾人の著者の目から見た、日本が描かれています。
台湾の日本統治時代と中華民国統治時代の違い、戦後の日本人の変化、など非常に興味深く読みました。著者の蔡 焜燦(さい・こんさん)は、司馬遼太郎の紀行文「街道を行く」シリーズの台湾編の取材案内人でもあったため、司馬遼太郎との親交も深く、司馬遼太郎ファンとしてもおもしろいかも。
僕が個人的に、台湾が気になり始めたのは10年くらい前です。気になりだしたというと大げさですね。台湾を知った、と言う方が正しいです。それは、ロータスでエンジニアだったころ、IBMのラボがあるRochesterへ出張に行ったときのメンバーに、Davidという台湾人がいたことがきっかけでした。そのDavidは、僕にとって日本人以外の初めての友達です。友達というか、年上だし、そのときまだ若造の僕に色々教えてくれて、本当にお世話になったのでした。台湾なんて何も知らなかったそのときの僕にとって台湾の印象は、親切で頼れるDavidそのものでした。
さて、その出張中、僕にとって非常に印象的で、今でも覚えている彼のエピソードを一つ。
Rochester出張は2週間。週末をはさんでいたので、土日に観光することになっていました。
ホテルのロビーで待ち合わせてみると、土曜日だというのに、Davidは早朝に一度Webでニュースを見るためにオフィスへ行って戻ってきたところ。そうまでして知りたいニュースってなんだと思ったら、選挙でした。そのとき台湾では選挙が行われていて、その動向が気になっていたそうで。当時僕がTVを見て知っていた台湾の選挙というと、花火が上がったり、かなりエキサイティングで、日本のそれとずいぶん違うなあ、という程度の印象だったので、台湾の人は熱心だなぁ、くらいにしか思いませんでした。ところが聞いてみると、なんと、それが2回目の選挙だというのです。そりゃあ注目するはずだと思う反面。民主的な選挙を手に入れたのがごく最近であるという台湾の実情が生々しく感じられた記憶があります。
それも10年も前の話でしたが、最近はまた出張でたびたび訪れる機会がありまして、改めて一度本でも読んでおこうと思って手に取ったのがこの本でした。是非皆さんに読んでいただきたい本です。第4章「祖国の裏切り」の章は、悲惨で読むのもつらいものがあります。かなり日本びいきに書かれていると感じる部分もありますが、その辺を差し引いたとしても知らないことが多すぎます(今までの教育でカットされている部分を考慮すると、これくらいでちょうどニュートラルになれるかも)。
司馬遼太郎が著者へ宛てた手紙の一文に「政治論をするのではなく、幸福論をすることによって」台湾問題が解決できればすばらしいでしょうと書かれていたのが、とても心に残りました。
いろいろな感想を持つ人がいると思いますが、とにかく読んでみて欲しいな。
日本のことがよくわかります。そして戦争に負けるってこういうことか、ということもよくわかる。日本の美徳というと、すぐに The Last Samurai までさかのぼっちゃいますけど(笑)、戦前にも美徳はもちろんあります。全否定はいただけませんね。教育勅語、修身で育った僕の祖父母が悪い人だとはとうてい思えません。それどころか、僕にはない美徳を持った立派な人たちだと尊敬できる面も多いですよ。良いところは見直してもいいんじゃないかなあ。正直、日本が心配になります。もったいない...
p.s.
ちなみにDavidとともに行った出張の最終日、僕はキャッシュ切れになってしまい、チップ用として20ドルほど借りたままになっています。同じ便で帰国だったので、成田で返すことになっていましたが、connection と arrival で分かれしまい、果たせていません。David もSkypeユーザーなので、前回台湾に行くたびに会おうと、Skypeで連絡を試みるのですが、彼も忙しいので、たまたまUS出張中だったりしてなかなか実現しません。この間はSkypeのボイスメールを残してきました(Skypeってすばらしい!)。今度会えたらまずお金返して(笑。本人はたぶん覚えていないでしょうけど..)、懐かしい話でもしたいですねー。
うん、なるほど、きのう仰せだったのはこれだったんですね..
”良いところは見直してもいいんじゃないかなあ”、温故知新でもありますか?
歴史はくりかえすならば、ぜひスパイラルにですね。
ps)今週末はUKなので、ぜひ不在投票しまっす!
投稿情報: boz100 | 2007年7 月22日 (日) 11:02
boz100さん、コメントありがとうございます。「仰せ」なんていうほど大したことではありませんが、外資系に長く勤めると日本の良さが、むしろよくわかるんです。同時に、もっと日本人は堂々としよう、と強く思う場面も多いです。
投稿情報: siwata | 2007年7 月24日 (火) 01:59