先日、オフィスにあったS上さんの「週刊アスキー増刊号 2008 6 10」を何気なくパラパラ読ませてもらっていたらとても面白く、一日借りてしまいました(買いなさい)。以前、八王子の実家からロータス(不動前)やマイクロソフト(笹塚)に通っていたときは、通勤時間が長かったので、毎週必ず週刊アスキーを買っていましたが、結婚してからはほとんど買わなくなってしまいました。でもたまに読むと結構いいんですよね。
この増刊号の"売り"は、「全部無料!最新ウェブ100」なんですが、最新のWeb上のサービスが非常に丁寧に解説されており、僕自身も参考になりました。ちょうど半分のところに白黒の綴じ込みページがあり、これがとても良かった。タイトルは「とじこみスペシャル!!ウェブ動向丸わかりハンドブック」です。ええと、とても良かったというのは、こういうことを週アスを読むような人にまじめに伝えていくということがとても良いと思いました。ということです。皆さんもご一読されておくことをオススメします。
その綴じ込みの中に「P2Pの行方を決めるもの」という章がありました。
もちろん「おおっ」とばかりに、目を見開いて読みました。見開き2ページなのですが、いやーこの記事もとても良かったと思います。P2P技術自体は悪くない、これから期待されている、総務省が主導する「P2Pネットワーク実験協議会」のシンポジウムも満席、等々の盛り上がり状況が示される一方で、ただし、違法コピーの入手にP2Pアプリケーションを使い続けていると、いつまでも「P2P = 違法コピー」の認識が、ユーザーにも、企業にも、著作権管理団体にも、残り続けてしまい、結果としてP2Pというテクノロジーの有効性が社会的に「置き去り」にされる恐れがあるというのが論旨です。この章は次のような記述で始まります。
(前略)だが、そのダウンロードボタンを押す前に、ちょっと待ってほしい。その1ダウンロードが、P2P技術の未来を閉ざしてしまう一歩になるかも知れないのだ。
P2P有効性は10年前から認識されていました。それをP2P界隈の人だけではなく広く認知させていくというのが僕のアリエルにおける後半数年の仕事でした。その当時はP2Pアプリしかなかったのでね。そして僕もP2P技術を「正しく使う」ことを強く訴えていきたいという欲求もありました。この綴じ込み記事でも、P2Pの有効性を示す良いアプリケーションを挙げています。もちろんSkype :)、MSのFolderShare(実はアリエルも当時同じようなアプリケーション層でフォルダを共有するアプリを作っていたんだよなー、日の目を見なかったけど。がんばって完成までこぎ着ければMSがFolderShareの代わりに買ったかもね?)、それからやはりRay OggieのGroove、などなど。
そもそも僕がSkypeに出会ったのも、P2Pの普及活動、啓蒙活動を続けていく中でのことでした。Skypeが登場したとき、やった!と思いました。なぜならP2P技術そのものは悪でもなんでもなく、その応用によって左右するということを説明するのにこんなに良いネタはなかったからです。「ほら、見てくださいSkype!こんな良いアプリケーションだってあるんですよ!P2P技術がなければ、無料通話は実現できなかったんですよ!」と言えるわけです。で、講演活動や執筆をまとめたのがこの本です。
そうこうしているうちにSkypeの部分だけが独立していって、Skypeの技術記事をUNIX MagazineとかNETWORK MAGAZINE、それからN+I NETWORK Guideなどから依頼されて書きまくった時期でもありました(N+I NETWORK Guideに書いた記事は今でもWebにあって、読めます)。
ITmedia エンタープライズ:PART2 Skype、その通信の仕組み (1/4)
ITmedia エンタープライズ:PART2 Skype、その通信の仕組み (2/4)
ITmedia エンタープライズ:PART2 Skype、その通信の仕組み (3/4)
ITmedia エンタープライズ:PART2 Skype、その通信の仕組み (4/4)
その後はP2Pと平行してSkypeについても調査を続け、特にSkype Public
APIの活用やSkypeの企業導入、コンサルなどについてアリエル内で事業化できないかを検討していたこともありました。そういう活動の中でSkype
社ともコンタクトができて、オファーが来たという背景があります。
だいぶ脱線しましたが、この週刊アスキー増刊の記事を読み、必死でP2Pの啓蒙をやっていた2003年〜2005年頃を思い出しました。ようやく「週アスのような雑誌」にこういう記事が書かれるようになったかーと感慨深いものがあります。もちろん僕だけじゃなく、P2P Today の横田さん、Tomo さん、古くは現はてな取締役の川崎さん、無印吉澤さん、元ソフトイーサ(現Google)池島君、首藤さん、小島さん、坂田先生、アリエルの人たち、元ニューロンの山田さんなどなど、その当時から草の根的にP2Pの有効性を訴えてきた方々の成果だと思います。
今年は江崎先生の旗振りの下、P2P教科書(インプレス) という現時点での集大成的な良書も刊行されました。いよいよP2Pが汚名を返上して、本来のポテンシャルを発揮できる時が来ているのかも知れません。そういう状況だからこそ、自分で自分の首を絞めるような行為への警告を週アス増刊号の綴じ込みから感じました。
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