このところ仕事が立て込んでいるところへ、先日の36時間にわたるSkypeのサービス不具合。そして復旧した直後に香港出張があり、少し疲れ気味。特に障害に関してはユーザーの皆さんにはご迷惑をおかけし、大変心を痛めた36時間でもあった。
Skypeの不具合については本社からの情報以外は話せないので、こちらを参照してもらいたい。個人のblogでは今回の障害の詳細に触れられないのであしからずご了承いただきたい。
そこで、個人的な感想を書くことにする。
実際、この期間にとても多くのことを学んだし、知った、そしてよく考えた。
[0]. 告知について、今後改善すべきことが明らかに
- 不具合が、ユーザーの環境のせいか、Skypeのせいかわからなかったこと
- それと相まって、日本語ブログへたどり着くまで時間がかかったこと
日本では、おそらくこの二つが大きな問題だったな、と認識した。本社へ送る日本からの意見書をPR代理店と共同で作成中。
[1]. 意外な人がSkypeユーザーだと知る
普段Skypeについて特になにも語らないような人が、Skypeが使えなくなったと大騒ぎするケースが目立った。それだけインフラ化していることなのかな。今まで4年間にわたり止まることがなかったが故に、「空気」的存在になれていたのかも知れない。それはとても良いこと。
[2]. いつも来ないようなメディアが記者発表に来て、間違った記事を書いた
先週の金曜日、Skype ProとSkype3.5の新機能説明会を、記者向けに行った。今回の説明会は文字通り、障害のための会見では本来ないが、質問が来ることは予想されていたのでそれは良い。ただし記事に障害のことしか書かないとか、しかも間違って(恣意的に?)記述されるケースが目立った。
たとえば、僕が言ったのは「僕はそこまで詳しく聞いていないのでわからないが、本社では原因を究明し、その問題点は修正済み」であるのに、いくつかのメディアは「僕は詳しいことを聞いていないのでわからないが」の部分を「Skypeでもはっきりわかってない。原因はまだ謎」のような書き方をしているメディアもあった。違う。本社開発では原因は明らかで、修正済み。それに関する(記者からの質問で出たような)詳細に関しては、そのときの僕は持ち合わせていなかった、と言うことに過ぎず、そう言った。そういう記事は記者の署名がないことが多いので、やはり意図的に書いているのかな、と思っちゃう。
説明会で、当然ながらこの質問が出て良かったことは、電話とインターネットの違いを説明できたことかな。日本ではとにかく電話電話で、Skypeを電話の代用として捉えている人は、つながらなくなると、「ほら、だめじゃん」となるが、実はインターネットユーザーからはそれほどの苦情はない。僕は繰り返し言っているように、(日経コミュニケーションの編集長インタビューでも言っているように)Skypeは電話を置き換えない。そしてインターネットは電話にならない。(それを無理矢理やろうとしているのがNGNという理解)その方が楽しい。
[3]. ワクワク、そして悲しく、だが強さも示せたか
これはP2Pのエンジニア、またはP2P技術のエヴァンジェリストとしての感想。障害発生当時、非常に不謹慎だが、1エンジニアとしてはワクワクしてしまった。エンジニアとして障害に対するあらゆる憶測を試みたりしていた。もちろん実現はしていないが(それどころではなかったが)、本心ではP2Pアーキテクトの人たち急遽大集合して、ああでもないこうでもないと、さながら将棋の対局の控え室のように原因を推測してみたかった。(もちろんSkypeの日本の責任者として、一刻も早い情報提供および復旧を願っていたのは当然ですよ!)
ただ同時に、自分を含めて、P2P技術の成功例としてSkypeに期待しているP2Pコミュニティの1員としては、現在最強のP2Pシステムがこのような障害に陥ったことそのものは悲しい事件であった。エストニアのオフィスで徹夜で作業をしている、エンジニアやアーキテクトはみんな見知った仲で、顔が浮かんでくる。がんばれがんばれ、と祈っていた。
復旧後、しかし、4年もの歳月、しかもユーザー数が他に例を見ないほどのペースで急増するサービスが一度も長期的にストップしなかったのは、やはり驚異であり、P2Pテクノロジーの底力と言えるだろう。この部分はP2Pコミュニティとして誇って良いと思う。
[おまけ]. 障害発生中にSkypeの評価が高まる?!
障害発生中に、2ちゃんねるなどの掲示板を見ていたら、普段Skypeに依存し、本当にコミュニケーション手段が無くなって困っている人たちが、MSNメッセンジャーやGoogleTalkを試しはじめ、その結果をスレッドにあげていく流れになった。
(1) MSNメッセンジャーを使った人の報告。
「やはりSkypeの音質にはかなわない」
(2) 別の人はそれならばということでGoogleTalkを使って次のように報告。
「音質はSkypeと変わらないかも。でも、Google Talk って、複数人で会話ができないんだね。今、知った」
これらの発言は、PR的に見ると非常によい。Skypeの差別化が浮き彫りにされている。他人の口から良いと言ってもらうことがすなわちPR(Public Relations)だから。
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総合的に見ると、今回の障害は、誤解を恐れずに書くならば、メディアへの露出も高まったし、ライバル製品との比較も行われ、しかも優位な結果になったし、Skype常用者にとってもたまに「空気」を意識するきっかけにもなったし、良いことずくめであったように思う。もちろんサービスダウン時にご利用いただけなかったユーザーの皆様には心よりお詫び申し上げる。また同時に、公式ブログのコメントに非常にポジティブな意見が多かったことに対しては感謝です。繰り返しになるが、もう同じ原因でSkypeが止まることはない。
レガシーメディアの記者を含む、日本の皆さんにインターネット、およびソフトウェアを知ってもらう良いきっかけになれば、と思う。
こんにちは。いつも拝見しています。
告知の件は、今後はSkype公式日本語フォーラムにも書いてもらえると良いのではないかと思います。
また、インターネットと電話の違いのくだり、やはりSkypeIn/Outをサービスとして提供している上では、電話としての最低限のサポートはするべきだと思いますし、電話として使っている人たちの方が切実であるということをお忘れなく。インフラとしての責任は重大です。
私もそうですが、今やほとんど通話はSkypeでという人もいるわけで、そうした人たちにとって今回の障害は一般加入電話に戻るべきか、と思わせるのに十分な出来事でした。これは障害が発生したことそのものではなく、その後のサポート体制によるものです。
インターネットユーザーからは文句が出なかったというのはそれほどメインに使っていない可能性があるからで、それをもって大したことなかったというようなのは首をかしげざるを得ません。
ほらダメじゃんとは言いませんが、もう少し真摯に向き合って欲しいと思います。
P.S.
私がSkype信者と言って良いほどSkypeを愛して使ってきたことはSkypeフォーラムを見ていただければわかると思います。ただの文句ではありません。
投稿情報: Hossy | 2007年8 月28日 (火) 01:55
Hossyさん、コメントありがとうございます。またいつもユーザーフォーラムでのご発言感謝しています。本来、このブログは僕の個人ブログであって、内容も個人的なものです。それが読者に許されるかどうかはわかりませんが(実際Hossyさんのようなコメントをいただくのであれば、もう少し内容を考える必要があるかな、と思いました。)。そして本ブログはSkype社の意見とは関わりのないことを、まずお断りしておきます。あくまでも個人的な感想です。ちなみにSkype社では個人ブログを持つことは奨励されています。
と、自分としては切り分けているつもりでしたので、Hossyさんのコメントの内容ごもっともである、と思うと同時に、それゆえに、この内容は、この個人ブログに書いています。告知の媒体としてユーザーフォーラムを活用する案につきましては、今後改善是非そのようにさせていただきたいと思います。
ただ個人的感想とはいえ、インターネットユーザーからはあまり苦情がなかったという点は、決してそれだから別にいいじゃん、というユーザーに対して僕のひらきなおりの意見ではなく、メディアおよび日本人一般に常に感じている、インターネットとかソフトウェアの捉え方についての違い(だいたい相対するものにハードウェアや電話があがってきます)に関する僕のちょっとした愚痴でした。日本のソフトウェア/インターネット産業の後れに対するいらだちもあります。そこだけは補足しておきます。個人ブログにおける個人の意見ですので、くんでいただければ幸いです。
このようなブログでは、公私の境が微妙になるのは仕方ありませんが、僕としてはそこは一線を引いているつもりです。ここでは、あくまで個人的な感想として淡々と書いたつもりです。
またはもし公私の境が僕が前提としているものと違えば、今後はこのブログでの発言も変えていったほうが良さそうですね。本音が少しでも書ければおもしろいかなーと思っている部分もあるのですが。
Skypeおよびユーザーフォーラムに関しては、僕は自分ではなくユーザーの立場でコメントする必要がありますので、もしそちらに書くのであれば、内容や言い回しはかなり違うものになるでしょう。
やはりその境界は難しいものですかねぇ。。。
ご理解いただいているかとは思いますが、せっかくなので、ユーザーフォーラムについても本来の位置づけを簡単に。フォーラムはあくまでユーザー様同士の意見交換の場がほしい、というユーザー様の声が実際にあったために設置しているものです。フォーラムで一次情報を発信し、そこで質疑が発生することは広報として許可されていませんし、サポートするリソースもありません。緊急情報告知で、今回は書き込みがありましたが、基本的にはユーザーの皆様の情報交換の場です。
Skype公式発言は、SkypeのWebサイトおよび、公式ブログ、広報よりのプレスリリースに限られます(もちろんこのブログでもありません)。
またSkypeからの公式回答を期待される場合は、フォーラムではなく、カスタマーサポートおよび広報経由になります。
貴重なご意見をいただきましたが、Skypeへの改善要望は、本来でしたら個人ブログではなく、フォーラムのメッセージやカスタマーサポートへ送っていただけると助かります。
投稿情報: siwata | 2007年8 月28日 (火) 02:33
こんばんは。
個人ブログであることは理解している上で、ちょっとコメントをしてみました。強く批判しているつもりもないのですが、少しだけユーザーからの見方として伝えたかったというところでしょうか。Skype社への意見、というよりも岩田さんへのコメントという感じでした。
フォーラムを見ていると、どうしても情報の少なさに起因するモノが多いと感じるため、かなり浸透してきた今となっては、少しやり方を変える必要があるのかもしれませんね。
いずれにせよ、日本に限って言えば、これからの体制によってさらなる躍進を遂げるか、このままで留まるかの分岐点に来ているような気がします。大変なこともたくさんあるでしょうが、がんばってください。
投稿情報: Hossy | 2007年8 月28日 (火) 22:44
Hossyさん、コメント(&応援)ありがとうございます。
ローカル言語による情報の少なさは日本に限らず、英語以外の国では問題になっています。さらに言うとSkypeに限らず他のソフトウェアやサービスでも同様でしょう。Skypeの場合、その理由の一つにはリソースが限られていることがあげられます(本社の方針です)。その点に関しては、Hossyさんのおっしゃる「体制」が大事だと認識しています。僕の着任以来、まさにリソース不足、日本語による情報不足を根本的に解決するプロジェクトを最重要事項で進めています。ただ少し予定より時間がかかっている状況です。
投稿情報: siwata | 2007年8 月28日 (火) 23:09
iwataさま
Skypeを利用させていた立て降ります。
日頃の運営ご苦労様です。
さて、私はオーストラリアより日本語を選択してSkypecastを定期的に開いていますが、最近日本の目次や開催中にリストアップされず、利用者の方にDirect#をお知らせして参加してもらっています。
先にSkpyeのホームページに責任者の方の謝罪文も載っており、安心していましたが、まだ、内在的な問題が有るようです。
誠にご多忙中恐縮ですが、本件について改善できるようでしたら、対応お願いします。
スカイプのフォーラムの日本語のページから投稿できなかったので、こちらへご連絡させて頂きました。
よろしくお願いします。
ティータイム
投稿情報: tea time | 2007年8 月30日 (木) 19:44
tea timeさん、コメントありがとうございます。また、いつもSkypeを使っていただいてありがとうございます。
Skypecastのリスティングですが、おそらく言語ではなく、IPアドレスで判定されているからでしょうね。詳しくは、カスタマーサポートにお問い合わせいただけますか?
Skypeに関する障害報告、お問い合わせはすべてカスタマーサポートにご連絡ください。ちなみに、ユーザーフォーラムはユーザー同士の意見交換の場で、Skypeのスタッフからの回答は基本的にはありません。
カスタマーサポート:
http://www.skype.com/intl/ja/help/support/
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿情報: siwata | 2007年8 月31日 (金) 01:04